最近、AIチャットサービスのChatGPTが非常に話題となっており、AIが生活に与えるインパクトが強くなってきていることを感じます。そんなAIですが、AIを使用して幸福を分析する研究も進められているようです。
今回は幸福について研究しているポジティブ心理学とAIによるビッグデータの解析から分かったことをもとに、幸福度を上げる方法について考えていきたいと思います。
幸せになりたい人、誰かを幸せにしたい人に、何かヒントが与えられる記事になっていれば幸いです。
幸福度はセンサで測定できる
現代の科学技術をもってすれば、幸福度は加速度センサで測れてしまうようです。
もう一度いおう。幸せは、加速度センサで測れる。
矢野和男. データの見えざる手 (p. 82). 草思社.
幸せというと一人一人でユニークに違うものというイメージを持っている人が多い。
ここで、明らかになったのは「幸せな人の身体はよく動く」という単純で共通の事実である。
もちろん仕事が違えば、その業務によって、どれだけ動かなければいけないかは変わる。しかし、同じ人で見ると、幸せになると、より動く頻度が増えるというのは、意外な発見である。
従来ポジティブ心理学では質問紙を用いて幸福度を測っていました。それに加えて名刺型ウェアラブルセンサで、身体の動き、周囲の音量、温度、照度、だれと会話していたかなど様々な情報を計測し、時刻とともに記録する実験が行われました。
実験群と対象群を用意し、実験群には幸福度を増やす施策が実施されました。質問紙の結果、実験群は幸福度が上がったことが分かったのですが、同時にセンサで取得したデータから幸福度と身体運動の総量に強い相関があることが示されたのでした。
そしてもう一つ重要な事実があります。それは「会話するときの、身体運動の量」が大きい人の集団が「積極的に問題解決する人」の集団と一致したということです。
つまり、以下の流れが身体の動きを計測したことで示されたということになります。
幸福度を増やす施策を実施する
↓
身体運動の量が増える ≒ 積極的に問題を解決するようになる
↓
幸福度が上がる
身体運動と幸福度は伝播する
ウェアラブルセンサを用いた実験結果でもう一つ紹介したいことがあります。それは身体運動は伝播するということです。
まわりの人たちが活発だと自分も活発になりやすく、まわりの人たちの身体運動が停滞すると、自分も停滞する。これが大規模なデータ計測と分析により確認されている。
矢野和男. データの見えざる手 (p. 97). 草思社.
先ほど、身体運動の量と幸福度に強い相関があるという話をしました。つまり、身体運動が伝播するということは、幸福度も伝播するということになります。
自分が積極的な行動をしたり創意工夫をすると、周りの人も同じような行動をして幸せになる。自分が消極的になったり活発度が下がると、周りの人も同じような行動をして幸福度が下がる。周りから自分に対する影響もまた然り。
さて、これらの事実から、幸福度をどうやって上げるべきかを考えていきます。
幸福度を上げるためには
ここからは、上記で学んだことをもとに、幸福度を上げるために実際にどうすればよいのかを自分なりに考えていきます。幸福度が決まる要因については前回記事でも紹介しています。
自分の幸福度を上げる
まず、自分の幸福度を上げるためには、以下が考えられます。
- 積極的な行動をとる人が多いコミュニティに入る
- 問題解決や創意工夫などの積極的な行動をとるようにする
一つ目は、単純に幸福度の伝播で周りから良い影響を受けよう、ということなので割愛します。
二つ目の積極的な行動をとるための具体的な方法は、『幸せがずっと続く12の行動習慣』に記載されています。本には幸福行動診断テストが載っており、その結果で12の行動習慣の中から自分に合ったものを4つ選びます。私の場合は以下の4つになりました。
- 楽観的な気持ちを高める
- 身体を大切にする
- 心から打ち込める活動をもっと増やす
- 人生の喜びを深く味わう
重要なのは自分に合った方法を見つけることのようです。『データの見えざる手』でも以下のように述べられています。
この大量の定量的なデータにより、さらに重要なことが明らかになった。それは「どうすれば幸せになれるか」は、人ごとに異なり、一律に全員当てはまる法則性はないことである。
矢野和男. データの見えざる手 (p. 173). 草思社.
幸いにも幸福度は「行動を起こした結果」ではなく「どんな行動を起こすか」によって決まります。とりあえず、良さそうと思ったことは何でもやってみましょう。結局のところトライ&エラーです。何でもそうですが、実際に始めてみないと気付けないことは多く、それで課題が見つかればそれはそれでよし。もし、全然自分に合わないと思ったら、やめて元に戻せばいいのです。ハードルはできるだけ低くしましょう。
周りの人の幸福度を上げる
次に、周りの人の幸福度を上げるためには、以下が考えられます。
- 周りの人が自発的な行動がとりやすい環境を整える
- まず自分が積極的な行動をとるようにする
『データの見えざる手』でも指摘されていますが、「自発的な行動をするように」と人に指示することは、矛盾を抱えているためできません。強要した時点でそれは自発的、積極的な行動ではなくなります。まずここに注意が必要です。
それを踏まえて一つ目のできることは、自発的な行動がとりやすい環境を整えることです。
例えば職場であれば、以下のようなことが考えられます。
- 言い出しっぺの法則をやめる (最初に提案した人が担当者、責任者にされないようにする)
- 部下と上司で会社の目標と個人の目標をすり合わせる
例えば子育てであれば、以下のようなことが考えられます。
- 勉強してほしい子供に勉強しろと言わない (心理的リアクタンスで逆効果になる)
- 何か気になったときにすぐ調べられるように図鑑や辞典を家に置いておく
家族や友人に対して、幸せになってほしいと思って一方通行の思いやりをかけてしまったことはありませんか?自分のことは変えられても、他人のことは変えられません。馬を水辺につれていけても水を飲ませることはできないのです。
しかし、ここでAIによるビッグデータの解析結果が活きてきます。
二つ目の、「まず自分が積極的な行動をとるようにする」を実践することで、周りの人に身体運動と幸福度を伝播させるのです。他人のことは変えられませんが、他人に影響を与えることができると科学的に証明されているのですから、実践しない理由はありません。
まとめ
以下、この記事のまとめです。
- 積極的に問題解決する人は、身体運動の量が多く、幸福度が高い
- 身体運動の量は伝播する。つまり、幸福度も伝播する
- まず自分の幸福度が上がるようにトライ&エラーをためす。気が付くと周りの幸福度も上がる。
牛のつぶやき
結局、人生を幸せにするためには“とりあえずやってから考える”が鉄則みたいね